ふじみクリニック

休日の過ごし方

2025.4.29


[2025年4月29日]

4月新年度が始まって一か月、慌ただしい日が続き、ようやく最初の息継ぎの連休が来ました。4月29日の「昭和の日」に始まる週をゴールデン・ウィークと、いったい誰がいつ頃呼び始めたのでしょうか。

ウィキペディアによると、映画会社(大映)のキャッチコピーだったらしい。1951(昭和26)年のこの時期に上映された『自由学校』という作品が大ヒットし、同社創設以来の興行成績を残しました。このヒットにあやかって、この時期に観客を多数動員することを目的として当時の大映経営陣が発案して流布させた宣伝用語であり、和製英語だということです。なんだかたいした由来じゃないですね。筆者の方は奥田民生のデビュー間もない頃の曲(休日)を思い出しました。

ここからずっと 離れたところ/わからないけど はるか遠く/プールと空が うすい水色/見たこともない 花びらはオレンジ・・・(1992)

さて、そうは言っても、働く人にとって休日はとても重要なものです。

仕事によるストレスをゼロにできないとすれば

仕事(当然ながら主婦等の家事労働も含まれます)によるストレスは様々なかたちで押し寄せます。燃え尽きることなく働き続けるには、ストレスの原因や解消方法を追究するよりも、そのストレスの性質と自身の相性とを見直し、苦手なストレスとのつきあい方を工夫した方が役に立つ場合があります。

疲れがたまったいるかどうか、まず自身の心身に問いかけることが重要です。仕事しているただ中、夢中で動いているときは、自分の肩の凝りや筋肉のきしみに気づかないことが多いものです。足を止めて、腰を下ろして首,肩,腰をゆっくり回してみて初めてアイタタタと悲鳴を上げることも少なくありません。精神面ではなおさら自身の内面を客観視することは難しいものです。

疲労の現況を自覚し、気持ちを切り替えるためにもまず休息が大切です。からだもこころもリフレッシュしてこそ、あらためてそのストレスに向きあう意欲が生まれるというものです。そのための休み方について考えてみましょう。

なにもしない休養と、好きなことをして気分転換を促進する休養

休養には、何もしない「消極的休養」と、何かをする「積極的休養」があります。

何もしないでただごろごろしているのがいい時もありますが、計画を立てて、趣味の活動や旅行など非日常的体験を通じてリフレッシュすることができるのが、連休の醍醐味と言えるかもしれません。単に疲労回復だけではなく、次の出勤日からのエネルギーを養うように過ごしたいものです。

もしあなたが、日ごろ複数のメンバーで話しあったり、一緒に行動したりすることが多い職場で働いているのなら、休みの日には落ちつける環境でひとり静かに好きなことに没頭するのもよいでしょう。それとは逆に、ふだんは単独で黙々と事務やものづくりの作業をするような職に就いているのなら、自然のなかでからだを動かし、声をあげるような活動を楽しむことがこころの均衡を保ったりすることがおすすめです。

家でダラダラするのはいけないか

ネットで“GW”と検索すると、おびただしい数のイベントや旅行ガイドの情報に接することができます。けれども、どこかへ出かけるためには、それなりの体力気力(とお金)が必要です。「消極的休養」と聞くと、ちょっといけない時間の過ごし方かと感じてしまいがちですが、家でひたすらダラダラ過ごすのが必要なときもあります。ただし、自身の心身の疲労具合を確かめて、この連休は「何もしない」と決めたときにも、出勤日にきちんとエンジンを再起動させるためには、可能な限り次のようなことに留意してください。

  1. 疲れ果てた結果として一日目を全部睡眠に費やしたとしても、二日目からは寝すぎない。少なくとも一日1回は外に出て陽の光を浴びる。必要な睡眠をとり目が覚めているのに、寝床の中に長時間とどまらない。
  2. なるべく朝食(ブランチになっても)を摂る。夕食など一食だけにドカ食いしない。
  3. 日中に飲酒しない。
  4. 家族、友人、その他わずかでも他者と接する機会をもつ(買い物に出たときの店員さんとの挨拶でもよい)。
  5. (連休が三日以上の場合には)再出勤日の前々日からは出勤日とだいたい同じ時間帯に寝起きする。

慢性疲労状態にあると、何もする気力がわかず、長い休みが終わってしまうこともあります。体調不良を自覚しながら病院やクリニックに受診する気にもならず、家庭サービスも気になるけれど、子どもたちと遊んだりどこかに出かけたりするのも面倒。友達に誘われても断り続けて会わずにいるうちに声をかけてもらえなくなり、とくに楽しめる趣味もない、休み明けの出勤はため息つきつつ混雑した電車に重い身体を運び込む ― そんなときこそ、(病院に限りませんが)誰かに相談を持ち込む“勇気”が必要です。

ライス・ワークって何?

ストレスチェックに関するネット情報を眺めていたら、「ライス・ワーク」という言葉が出てきました。調べてみたら、似たような言葉が4つ出てきて、人生のステージに応じた適切な仕事種別を表すもののようです。これも和紙英語ですね。辞書で“rice work”と引くと「米作り」と出てきます。(そりゃそうですよね。欧米人ならパン〈bread〉が主食ですから。)しかしいくらか仕事に関して啓発性のある考えかもしれません。

①ライス・ワーク(Rice Work)
文字通り、ご飯を食べて生活するためにお金を得る仕事。サラリーマンのみでなくフリーランスでも同様で、マイナスイメージも多いステージということです。

②ライク・ワーク(Like Work)
自分の好きなことや、やりたいことを仕事にする。主体性や、クリエイティブな発想も出て、なりたい目標や夢に向かっている感覚を持つステージということです。しかし、好きだと思って始めた仕事が、実は自分に合っていなかったり、好きだとしてもストレスフルだったりということも珍しくはないでしょうね。

③ライフ・ワーク(Life Work)
この語はちゃんとした英語です。人生をかけた仕事。使命感や責任感をもって、自身のみならず他人のためにも有意な仕事との自覚があり、天職(calling)とも重なるでしょう。

④ライトワーク(Light Work)
これも変な和製英語です。辞書で引くと「軽作業」のことですが、この文脈では、人や社会に光を当てる仕事をする最上位のステージということになります。自身の経験を生かして社会貢献の意味合いが強いボランティア的な仕事を指すようです。

仕事を始めるにあたっては、まずは自立した生活を確立する(Rice Work)。最初の仕事にやりがい感が持てなかったとしても、自分の好きなこと(Like Work)を探す職業遍歴の中で、いつかはこれぞ自分の天職とおもえる仕事(Life Work)に出会いたい。年経て一定の職業的達成が得られたのちの余生は、自身の経歴を活かし、お金のことは考えずに社会貢献可能なボランティア(Light Work)を実行する ― そんな人生と仕事との関係を誰かが提唱したのでしょう。

筆者としては、上記の仕事観に反対はしませんが、そんな明確な区分は難しいと思いました。それぞれ重複的であるし、ライス・ワークをしっかり続けることにより同時に社会貢献を果たしている人だってたくさんいると思うからです。付け加えれば、人生最後のステージ(老年期に身体が動くとしたら)は、他者貢献を重んじる「光を当てる仕事」よりも,「軽い仕事」がいいなあと思ってしまうのが本音です。

ひとつずつ解説するのは難しいところですが、「働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト:こころの耳という厚労省のポータルサイトがあります。電話やメール相談も受け付けているようですから、参考にしてください。